さぐりさぐり、めぐりめぐり

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変えられるもの、変えられないもの

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よく「広い世界、宇宙のことを考えたら自分の悩みなんてちっぽけだ」みたいなことが言われる。個人的には、これには一度も納得できたことがない。

言わんとしていることは分からなくもないけど、そんな神みたいに俯瞰した視点は持ち合わせてないし、それどころか自分は自分の悩みとか自意識にいつも内側から圧迫されて破裂しそうになるよ。

そんな感じで最近は自分が自分であって、自分以外の何かに突然変わることなどないという事実に結構苦しんだりしている。

変えられない自分の宿命みたいなものと、どう上手に付き合っていったら良いのか。
そんなことが分からない。


少し前に、昨年くらいからタイムライン上で追っていた安田祐輔さんの著書『暗闇でも走る』(講談社)を手に取った。

安田さんは現在、不登校・鬱・引きこもり当事者がもう一度前を向いて生きるために受験支援などを行う「キズキ共育塾」や、鬱や発達障害者の就労支援を行う「キズキ ビジネス カレッジ」を運営するキズキグループの代表だ。自身も発達障害、鬱、引きこもりに起因したさまざまな問題を過去に背負っている。

高校中退・ひきこもりに限らず、どん底の状況にある人々は、そもそも頑張る気力が失われていることが多い。頑張ればなんとかなると多くの人は言うかもしれないが、そもそも困難な状況にある人々は「頑張れない」ことに悩んでいるのだ。*1

概して、こうした自伝は困難を克服したエピソードや特定のケースにだけ適用できる参考例などが溢れている。しかし、この本には、ままならないところがままならないまま今も残っていて、その人が進行形で今も模索しながら生きているということが書かれていて信用できた。

本文の中でも、安田さん自身も拠り所にしてきたというアメリカの自由主義神学者ラインホルド・ニーバーの言葉がとりわけ印象的だった。

神よ
変えることのできるものについて
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを
識別する知恵を与えたまえ。*2

何も手につかないとき、決まって逃げ込むのは文学の世界だ。
論文に先行研究があるように、この苦しみの正体だって誰かが掴んでいるかもしれない。だとすれば、先人たちはどう立ち向かい、折り合いをつけ、うまく付き合っていったのか、そうしたことに対するヒントだってあって良いだろう。

ニーバーの示唆はまさに、求めていた言葉の一つだった。
変えられないものを受けいれる冷静さと、変えられるものを変えるだけの勇気を。

▼書籍はこちら

暗闇でも走る』(講談社)安田祐輔

*1:『暗闇でも走る』安田祐輔

*2:ラインホルド・ニーバーの言葉